前登志夫研究室
前登志夫さんは、昭和後期から平成にかけて活躍された日本を代表する歌人です。旧広橋小学校(現峠のまなび舎)に通学されていたり、校歌を作詞されていたりと当施設にとても深い縁がある方です。
アニミズム的な宇宙観、生命観を表現した短歌を詠み続け、歌集の他に吉野をテーマとした随筆も多数執筆しています。吉野の山暮らしから生まれた歌や随筆はこの地に住む私たちに素晴らしい贈り物を届けてくださったと思っています。前さんの文章には私も知っている場所が多々出てきますので、きっと今私が見ている景色と同じ景色を見ていたのだろうと思うと、その景色の中で前さんが感じたこと、考えたことが私に共鳴してくるような気がします。
こちらには前さんの著書を多く置いておりますので、ここで前さんの世界観に触れたり吉野や広橋の歴史を知るきっかけとなる場になったら嬉しいです。ソファや薪ストーブがありますので、気軽に談話室としてもご利用下さい。(要連絡)
<経歴>
1926年(大正15年)1月1日奈良県吉野郡下市町広橋生まれ
旧制奈良中学(現・奈良県立奈良高等学校)に入学
同志社大学経済学部に入学、中退
戦後まもなく詩作を始め、フランスやドイツの詩を学ぶ一方、柳田國男や折口信夫の民俗学にも傾倒
1951年(昭和26年)吉野に帰郷。
1956年(昭和31年)詩集「宇宙驛」刊行
やがて短歌に転じ、前川佐美雄に師事
1964年頃からテレビ・新聞・雑誌等で吉野を語ることが多くなる
1974年(昭和49年)金蘭短期大学助教授に就任
1980年(昭和55年)歌誌「ヤママユ」創刊
1983年(昭和58年)以降、家業の林業に従事しながら同地を中心に活動を展開。アニミズム的な宇宙観・生命観を表現した短歌を詠み続けた。
2008年(平成20年4月5日)没。
<受賞歴>
1965年『子午線の繭』で第9回現代歌人協会賞候補
1978年『縄文記』で第12回迢空賞
1988年『樹下集』で第3回詩歌文学館賞
1992年『鳥獣蟲魚』で第4回齋藤茂吉短歌文学賞
1998年『青童子』で第49回読売文学賞
2003年『流轉』で第26回現代短歌大賞
2004年『鳥總立』で第46回毎日芸術賞
2005年 全業績により、第61回日本芸術院賞文芸部門、併せて恩賜賞
<蔵書>
宇宙驛(1956年、詩集)
子午線の繭(1964年、歌集)
吉野紀行(1967年随筆)
霊異記(1972年、歌集)
非在(1976年、歌集)
山河慟哭(1976年、随筆)
縄文期(1977年、歌集)
存在の秋(1977年、随筆)
前登志夫歌集(1978年、歌集)
吉野日記(1983年、随筆)
樹下三界(1986年、随筆)
万葉びとの歌ごころ(1986年、随筆)
樹下集(1987年、歌集)
吉野遊行抄(1987年、随筆)
吉野鳥雲抄(1989年、随筆)
吉野風日抄(1991年、随筆)
森の時間(1991年、随筆)
鳥獣虫魚(1992年、歌集)
吉野山河抄(1993年、随筆)
木々の声(1996年、随筆)
青童子(1997年、歌集)
明るき寂寥(2000年、随筆)
流轉(2002年、歌集)
鳥總立(2003年、歌集)
前登志夫歌集(2005年、歌集)
病猪の散歩(2004年、随筆)
歌のコスモロジー 数奇と伝統(2004年、随筆)
落人の家(2007年、歌集)
羽化堂から(2009年、随筆)
大空の干瀬(2009年、歌集)
野生の聲(2009年、歌集) 魂の居場所を求めて(2014年、白洲正子との対談集)